御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「これからの事・・・考えなきゃだね」

ボソッと呟き立ち上がる。

さて・・・お風呂に入って寝よう。

リモコンをテーブルに置いてバスルームヘ向かおうとしたその時だった。

何かに引っ張られているのに気づいた。

振り向くと寝ていたはずの鈴城君が私のパーカーの裾を掴んでいた。

「す、鈴城君?ごめん・・・起こしちゃった?っていうか・・・
起きたなら自分の部屋で寝た方がいいよ。ここで寝たら
風邪引いちゃし・・・・それと裾放してほしいんだけど・・・」

首だけを鈴城君に向け早口で話すが鈴城君は放してくれない。

「鈴城君?」

名前を呼んでも返事もしてくれない。

何かあったの?

すると鈴城君は急に立ちあがり何も言わず後ろから私を抱きしめた。

えええ?!

なに?どうしたの?

どうなってんの?


心臓がバクバクして何か言わなきゃと思うのだけど

あまりにも突然の事で頭は真っ白になる。

「・・・決まったよ」

耳元で囁かれた言葉にドキッとした。

それがどういうことなのかすぐにわかったからだ。

「何が・・・決まったの?」

私は心の中で落ち着け自分と言い聞かせるように鈴城君の言葉を待つ。

すると数秒の間が開いた。

それが私にとっては胸が締め付けられる程苦しく感じた。

「・・・・海外赴任の内示がでた。正式には1週間後に辞令が下りる」

私にしか聞こえないぐらいの小さな声だった。
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