御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
何だか不思議な光景だ。

鈴城君がカートを押して私がカゴの中に商品を入れる。

そして私の歩幅に合わせて並んで歩く。

二人でメニューを考えながら買い物をしていると自然と会話も弾む。

「これ買っていい?」

鈴城君がロールケーキを指さした。

「へ~~ロールケーキ好きなんだ~」

「悪いかよ」

少し照れながらロールケーキをカゴに入れた。

何だかその姿がかわいくて笑みがこぼれる。

そしてお酒売り場の前で今度は私の足が止まった。

「あ!これ・・・」

私はワインの冷蔵ケースからブルーのボトルを取り出した。

「どこのワイン?」

鈴城君が覗き込む

「あっこれ?これはドイツワイン。シュロスカペレ シュペトレーゼっていうワインでね
甘口なんだ。私が初めて飲んだワインで、ブルーのボトルも綺麗だし、とても飲みやすいの。
でもこのワインはあまりスーパーで見ないから・・・」

でも鈴城君のロールケーキの五倍以上の値段だ。

こんな贅沢はできないかな・・・

「買ってあげるよ」

「え?」

「好きなんだろう?」

「う・・・うん。でも・・・」

やだ私ったらお酒のこと言われただけなのに・・・

好きって言葉に敏感に反応してドキドキしてる。


「俺も飲んでみたいからさ」

鈴城君は私の手からワインを取るとそのままカゴの中に入れる。

「あとは・・・チーズを買って・・・家飲みしよう」

私に笑いかける鈴城君の顔を見たら

何だろう・・・凄く幸せを感じた。

買い物だけなのに・・・ただ横にいるだけなのに・・・

でも優しくしないでほしい。

だって・・・別れが辛くなるだけだから

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