御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「え?ちょ・・ちょっと鈴城君・・・何するの?」

私を中に入れまいと引き戸を片手で押さえると

不動産屋の店主と話をして店から出てきた。その時間は1~2分の出来事。

鈴城君の手にさっきの茶封筒はなく、その代わりに

私の手を強く握ると歩きだした。

「ちょっと!鈴城君。私、新しい部屋見つけて仮契約したの。ねえさっきの茶封筒には
書類が入ってたんだけど返して!」

鈴城君の背中に訴えかけるように言うが返事をしてくれない。

鈴城君は私の手をさらに強く握ると駅前の公園へと向かう。

もう一度名前を呼んで同じ事を言おうと口をひらきかけた時

鈴城君の足がぴたりと止まった。

そしてゆっくりとこちらを振り返る。

その目はとても怒っているようだった。

「さっきの契約は俺がキャンセルしたから」

頭が真っ白になった。なんで

キャンセルするの?理由がわからない。

鈴城君はアメリカに行き、私たちは離婚する。

今住んでるマンションは鈴城君のお兄さん夫婦のものであって

離婚したら私があの部屋に住む理由がなくなる。

だから私は部屋を探した。


だって私たち別れるんだもん。
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