御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
どうやら私は相当鈍感な女だと思われているらしい。

今までのことを振りかえると確かに

映画を観たり、ずっと看病してもらったり、食事の回数も増えたし

プレゼントももらった。でもそれがチャンスと言うのなら私はチャンスの度に

本当の気持ちを言えなくて辛かった。

「あんな条件突きつけられて本心なんか言えるわけない。言ったら終わると思っていたんだもん」

「本心ってなに?」

鈴城君は私の横の椅子に腰掛けた。

「そ・・それは・・・」

だめだ・・・・無意識に言ってたとしても、改めて本人目の前にして

自分の気持ちを伝えるのはやっぱり怖くて言えない。

だって今、この状況でさえ嘘かもしれないって思っているんだから。

私の膝の上のに乗せている手に鈴城君の手が重なりビクッと肩があがる。

すると私を安心させるかのようにその手を握った。

そしてもう片方の手が私の頭をゆっくり撫でるとそのまま私を引き寄せる。

「す・・鈴城君!」

一気に鼓動が早くなる。
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