御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
ちらりと鈴城君を観ると目が合う。

「懐かしいね。憶えてる?」

「憶えてるよ。だってちょっと前に一緒に映画に行ったじゃない」

鈴城君は首を横に振る

「そうじゃなくて・・・っていうかのあはかなり鈍感だからな~~」

「え?」

映画と鈍感が結びつかず不服そうに口を尖らせる。

「この映画を観ようとその当時好きだった子に勇気を出して誘ったらOKもらって
すげ~~嬉しかったんだけど、約束の前日好きな子から断りの連絡が来たんだ。
彼女は自分の代わりに友達を行かせるからと一方的に言って電話を切ったんだよ」

「え?」

なんか聞き覚えがあるというか・・

「映画館に行ったらそわそわして落ち着きのない女の子が待ってて、好きな子の
名前を言ったら『私が代わりに来ましたすみません』って深々と頭を下げたんだよ」

「え?」

「子供だった俺は、彼女に振られたショックと初めて会う子と映画を観なくちゃいけない事に
イライラしながら会話もなしにただただ映画を観た。だけど映画の内容は
凄く感動する映画で、でも振られたショックとかいろいろ重なって気がつけば涙を流していた。」

ちょっと待って・・・そのはなし

「鈴城君?・・・それって・・・」

「思い出した?」

私は大きく頷いた。

「あの時一緒に映画を観たのって鈴城君だったの?」

確かに背が高くてかっこよかった。

なんでこんなかっこいい人を友達は振ったのだろうと思った。

だけど無愛想で私に対してかなり不満そうで

ショックだったけど、映画を観ながら涙を流す姿になんだか憎めなかった。
< 175 / 191 >

この作品をシェア

pagetop