御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
私は思い腰を上げ洗濯機のある脱衣所へ行く。

そして洗濯機の横の棚から洗剤と柔軟剤を取ろうと手を伸ばしたその時だった。

「何してんの?」

「ひゃ!」

後ろから急に鈴城君の声が聞こえびっくりして変な声をだしてしまった。

「べ・・・べつに」

こっそり自室に持って帰ろうとしていました。なんてあんな啖呵切っておきながら

言えなかった。

伸ばした手の行き場に困っていると

「・・・さっきは・・・大人げなかった」

蚊の鳴くような声が聞こえた。

ん?今謝った?

振り返ると口を尖らせてばつの悪そうな顔の鈴城君が立っていた。

「もしかして・・・・今謝った?」

「・・・ああ」

会社では絶対に見せることはないふて腐れ顔が凄くかわいく見えて

ケンカ中なのに胸がキュンとしちゃった。

だけど露骨にうれしい顔ができない私はわざとふて腐れた顔で

「私も・・・悪かった」と同じように謝った。


だけど・・・・私も鈴城君もそれに続く言葉が出ないというか・・・

お互いの事よく知らない者同士故にどうしたらいいのかわからなくて

部屋に戻るのが一番無難なのかなと思った私は

回れ右をしてぜんまい仕掛けのおもちゃの様にぎこちない歩き方で自室に

戻った。
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