御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
どうして涙が出たんだろう・・・・

友香と直美が私を心配してくれてたから?

私が2人に心配をかけていたから?

鈴城君の言った言葉が本心じゃない事が悲しいから?


きっとその全部が当てはまったからなのかもしれない。

私は「やだ~なんでだろうね?おかしいな~」と

ごまかしたけど、鈴城君はそんな私を黙って見ていた。



結局、友香たちは私たちの寝室を覗くことなく

帰って行った。

2人がいなくなったわが家はさっきまでの賑やかだったのが嘘の様に

静かになった。

「鈴城君・・・・今日はありがとう」

ソファーに座っている鈴城君の横に立ち頭を下げた。

鈴城君がいなければ今頃どうなってたかわからなかった。

2人が安心してくれたのは鈴城君の演技のお陰だ。

「・・・・・2人共のあの事が心配してたんだな」

鈴城君は頷きながら私を見る。

「そうなんだよね。もう~私って鈴城君みたいに芝居が下手だからさ~
最初はどうなっちゃうんだろうって思ってたんだけどね。
でも鈴城君のお陰で2人とも安心してくれて・・・・本当に助かっちゃった。
それにしても鈴城君の芝居のレベルには脱帽だよ。
嘘だってわかってもドキッとしちゃたくらいでさ~~
こんな事なら寝室をそれっぽくしなくてもよかったね。
・・・あっ!そうだ、鈴城君寝室にある私の私物片づけなきゃね」

自分がさっき涙をこぼしてしまった理由を聞かれるんじゃないかと思ったら

機関銃のように一人でベラベラとしゃべっていたが、正直鈴城君を直視出来なかった。

今は余計な事を言われる前に、さっさと私物を取りに行って自分の部屋に入りたい。

そしてそのままベッドに入って眠ってしまいたい。

眠って次の朝にはいつもの私に戻っていたい。

鈴城君の言った私への本心じゃない言葉も忘れてしまいたい。

じゃないと自分の鈴城君への気持ちがバレてしまう。

私は鈴城君を避けるように急ぎ足で鈴城君の部屋のドアノブに手をかけようとした。

その時だった

鈴城君が私の手を掴んだ。

「ねえ・・・・さっき何で泣いたの?」

鈴城君の私を見る目はいつになく真剣で答えるまで離さないよと

言いたげだった。

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