御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「手、放して」

嘘だってばれるのが怖くて私は思いきり視線を外し掴まれた手を小さく振った。

本当はこの手を放さないでほしいって思ってる。

だってこんなことされたら期待してしましそうだから

「あっ・・・ごめん」

鈴城君はハッとしながら慌てて私の手を離す。一瞬2人の間に沈黙が流れた。

でもいつまでも突っ立ったままではいられない。

「な・・なんか今日は朝からバタバタして疲れちゃった。
洗い物は後でやるからちょっとだけ横になるね」

何事もなかったように私は思いきり明るく振る舞った。

鈴城君の寝室から急いで私物を撤去して

そのまま自室に入ると枕を抱えるようにベッドに横になった。

「私の布団カバーと全然合わないし・・・」

鈴城君と色違いで買った枕が妙に浮いていた。

口に出すと余計に浮いて見えた。

どのくらい寝ていたのだろう。

窓の外は真っ暗で、時間を確認すると夜の10時を過ぎていた。

洗い物が残っていることを思い出し、キッチンに行くと

洗い物はなくて

その代わりに小さなメモが貼ってあった。


『おにぎり作ったからよかったら食べて』
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