御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
鈴城君はご飯を食べながらさっきの映画のチケットをちらりと見た。

「あっ、そうだった。そのチケット今月末までなんだよね。先輩がいけそうにないから
『奥さんと言っておいでって』くれたんだけど」

「え?」

私の箸が止まった。

奥さんと一緒にって・・・私の事よね。

「だから、明日暇なら行く?」

はい?今なんて言いました?一緒に行くって?

ちょっとー!本当に小躍りしちゃいそうなんだけどっ!

でも、露骨に喜んではいけない。

鈴城君が嫌いって設定の私だから・・・小躍りできません。

「う~~ん。別に・・・いいけど・・・・」

本当は、喜んで~~って両手広げちゃいたいけど

鈴城君の前では敢えて乗り気じゃない言い方をした。

「だったら明日映画に行こう。どうせ、予定が入っているわけじゃないんだろ?」

鈴城君は黙々とご飯を食べながらちらりと私を見た。

もちろん予定はない。

しかも映画。買い物とは訳が違う。

正真正銘のこれぞデートの定番だ。

「はいはい、どうせ用事なんてないですから、映画でもなんでも付き合いますよーだ」

頭の中はお祭り騒ぎだけど、顔に出しちゃいけない私は、食べ終わったお茶碗を持って

立ち上がった。

「じゃ・・・明日は9時な。それと・・・見たい映画探しておけよ」

鈴城君は私を見上げると、ぶっきらぼうな言い方をし、再び視線を御飯に向けた。

「わかった」

私は面倒くさそうに返事したもの野、お茶碗を洗いながら、生きててよかったと心底思った。

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