御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「え?まじかよ」

「だったら鈴城君が選んだら?」

昨夜、鈴城君と一緒に映画に行ける喜びに浸っていたら

いつの間にか眠っていたらしく起きた時には朝になってて結局見たい映画を決めることが出来なかった。

もちろん馬鹿正直に理由を言えない私は「すっかり忘れてた」と

鈴城君に言った。すると案の定、露骨に嫌な顔をされた。

「・・・正直、俺、今すっごく見たい映画がないんだよね。だけど、もらった手前
一応報告しないといけないし・・・」

鈴城君は口を曲げながら私に映画のチケットをちらつかせた。

本当は映画なんか見たくないのだと思った。

やっぱり二人の距離は縮まらなさそうだ。

「行きたくないなら無理に行く必要ないんじゃない?
先輩には行ったって言っておけば?」

本音じゃないけど口を曲げるぐらい行きたくないのなら

今日も、いつも通り家で一人まったりコース決定。

私は肩に掛けていたバッグを下ろし、部屋に戻ろうとした。

だが、鈴城君の手が私のバッグの紐を掴んだ。

「何部屋に戻ろうとしてんの?とりあえず映画館に着いてから決めるから
靴履いて行くよ」

鈴城君は私のバッグから手を離すとそのまま玄関へ


・・・・なんだ・・・行けるんじゃん・・・・やったじゃん!

飛び上がりたい気持ちをぐっと堪え、バッグを肩にかけ直して

映画館へと向かった。
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