御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
鈴城君の車に乗ること30分。

郊外にある大型ショッピングモールの中にある映画館に到着した私たちは

電光掲示板を見上げていた。

「どれにする?」

「う~~ん」

私は電光掲示板に表示されている上映時間を上から順に目で追った。

だが、最初からみたいものがないと言われちゃ~

堂々と言えない。それに私はこれが鈴城君との初デートって勝手に

決めつけているから

これが最初で最後かもしれないと思うと、やっぱり思い出に残るようなものが

いいんだけど・・・・

みたいものがないじゃ~話にならない。

「こうなったら消去法でいく?」

これが一番いい方法だと隣にいる鈴城君に話しかけたら

え?・・・いない?

どこ行った?きょろきょろとあたりを見渡すと、入り口入ったすぐ横にある

映画のチラシの入ったラックの前に立っていた。

「もう~何してるの?帰ったのかとー」

「これにしない?」

鈴城君はラックからチラシを1枚取ると、それを私に差し出した。

「これは?」

男女が白い服に身を包み、指を絡ませ見つめ合って寝ている写真で

タイトルは『ラストムーン~妻との最後の7日間~』だった。

その下には12年前のあの感動をもう一度と書いてあった。

「この映画、俺が高校生の時に見た映画のリメイクなんだ。

後にも先に映画で泣いたのはこれだけ」

鈴城君は少し照れながら私の手元にあるチラシを覗き込んだ。
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