御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
ちょっと待って?!

「私もこの映画見た事ある」

タイトルはあまり憶えてないけど内容ならしっかりと憶えてる。

「のあも見たの?」

鈴城君はかなり驚いている様子で目をぱちぱちしていた。

「そういう鈴城君だって!私は高一のときだったかな。
洋画を映画館でみるのって初めてで、字幕を
目で追う事になれてない私はずっと下の方ばかり見ていたんだよね。
だけどそのうち慣れてきて最後は号泣」

あの頃を懐かしむ様に目を細めた。

「俺は失恋したばかりだったから映画見て泣いたのか好きだった人を思い出して
泣いたのか憶えてないんだ。だからもう一度純粋な気持ちで見たいって思ったんだ」

鈴城君は淡々と話すが私はそれどころじゃなかった。

この世の中に、

これほどのイケメンを振る女がいるということに驚愕した。

「え?鈴城君でも失恋するの?」

私が見たことのないものを見たような目を向けると、鈴城君は怪訝そうな顔をした。

「失恋ぐらいあるって。・・・それより上映時間をチェック!」

小さな声で吐き捨てたものの表情はさっぱりしていた。

でも、気になる。

だって、その子は鈴城君のハートを虜にしたんだから・・・

私にはそんな力も魅力もない。

一緒にいるのは私が鈴城君の条件にぴったりだっただけ。


『大嫌い』って条件がね


「お~い。あと20分で始まるから席とってくる。ここで待ってて」

鈴城君はチケットをひらひらさせながら指定席を取りに行った。

私はその間にお茶とコーヒー、それとキャラメル味のポップコーンを買いに行った。

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