御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「す・・好きな人なんて・・・いないよ。いたら結婚なんて・・・」

まさかあなたですなんて言えるわけない。

私はごまかすように言葉を吐き捨てた。

「・・・そうだよな。でもさ、もし好きな人出来たら言ってくれな」

「え?」

なんでそんなこと急に言うんだろうと思った。

鈴城君は立ち上がると私の前に立った。

「まだ本決まりじゃないんだけど・・・アメリカ勤務の話が出てるんだ」

私はその瞬間真っ白になった。

だけど何か言わなきゃいけない。

言わなきゃいけないけどなんて言えばいいの?

やったじゃんって喜べばいいの?それとも、これで離婚できるじゃんっていえばいいの?

何かを口にだしてもそれは私の本心じゃない。

「のあ?」

鈴城君に名前を呼ばれるまで私の頭の中は大混乱だった。

「じゃあ・・これから忙しくなるね」

これが今の私の精一杯の言葉だった。

「・・・・そうだな・・・なあ・・のあ?」

鈴城君は再びベンチに腰掛けた。

「・・・なに?」

私が返事をすると鈴城君はしばらく何かを考え、言葉を選ぶように話しはじめた。

「もし、俺が海外赴任になったら・・・・どうする?
俺たち元々好き合って結婚したわけじゃないだろ?
嫌いな男との海外赴任なんて普通は嫌だよな」
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