御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
鈴城君は苦笑いしたが、私は苦笑いどころじゃなかった。

私たちの結婚生活が終わるかもしれないのだから。

鈴城君の言うとおりだ。

普通嫌いな人と右も左もわからない様な異国になんか行くわけがない。

だけど私は鈴城君の事が好き・・・大好き。

ここで鈴城君について行くって言ったら驚くだろし、きっとそんなこと

望んでるわけがない。

これは遠回しにちょっと早いけど離婚しとく?っていいたいのかもしれない。

元々離婚は承知のうえで少しでも大好きな人の近くにいたいっていう理由で結婚したんだから

別れることは想定内だけど・・・思ったより早くて頭の中は大混乱だ。

でも渋ってちゃだめだよね。

「そ・・そりゃ~そうよ。だって、私たちは嫌いなもの同士なんだもん」

精一杯鈴城君に興味のない女を演じた。

「・・・・だわな」

だが、鈴城君の声は寂しそうに聞こえた。

何でそんな寂しそうに言うんだろう。

寂しいのは私の方なのに~

もうやだ。マジで泣けてくる。


********************

「じゃあ、行ってくる」

鈴城君は出張のためアメリカへ行く事になった。

期間は1週間。

もちろんその間、私は一人。

「気をつけてね」

私は小さな紙袋を鈴城君に渡した。
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