恋する気持ち。
「恭華。」


須賀が近くにいるって、匂いでわかる。
須賀のつけている香りを私は覚えてしまっている。
いつの間にこんなに、須賀と近づいていたんだろう。


「なぁ。恭華。」



「うるっさいなぁ!もうっ!仕事中なのっ!」


私はバッと顔を上げ、須賀の方を睨みながら大きな声を出してしまう。


何人かのBAが驚いてこちらを見ている。
よかった、ちょうどお客様はいないみたい。


「なに。でかい声出してるんだよ。どうした?なんかあったのか?」


須賀は驚きながらも、私の目を見て、私の背のたかさに屈んで、私と視線を合わせる。


頭にポンッと手をおかれる。


「なんでそんな怒ってるんだよ?」


いつもは、俺様で妖しくて色気たっぷりの瞳が、今はとても優しい。


「……なんで涙目なんだよ?」


須賀は、ギュッと私を抱き締める。


「なんかつらいことあった?」


お前のせいだっ!


なんて言えるはずもなく。


ただ、須賀の胸に引っ付いているととても安心した。


力を緩めることなく須賀は、私をずっと抱き締める。



「あの。」



そこに、すずの声がする。



「いちお、店頭なので。」



そうだったー!!



私はドンッと須賀の胸を押す。


「あーあ。せっかく恭華が可愛かったのに。すずちゃん、邪魔しないでくれる?」


須賀はそう言って不満そうにため息をつく。


あぁ!なんてらしくないことをしてしまったんだ!


私は火照る頬を両手で押さえながら、須賀を睨む。


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