恋する気持ち。
「どうした?美波。行くぞ。」
背中を押され、歩き始める。
「あ、あの。私、一人で大丈夫ですから。」
山井さんの手から逃げようとからだを離すと、今度は腰に手を回される。
「ほら、危ないだろう。自分で思ってるよりも、フラフラしてるんだから。」
「あはは。だ、大丈夫ですよ、山井さん。もーダメですよ。奥さんいる人がこんなに優しくしちゃ。」
そう言ってやんわりと、腰から山井さんの手を離す。
その瞬間、山井さんの顔から笑顔が消える。
「………別れたらいいのか?」
「え………。」
「俺達、もうそんなに長くは続かないだろうな。」
山井さんはポケットに手を入れて歩き出す。