恋する気持ち。
山井さんに引っ張られた瞬間に私は、後ろへとおもいっきり引っ張られる。

そして、ドンッと誰かにぶつかる。



「………ほらやっぱり、狼がでた。」



「須賀っ!!」



走ってきたのか、息を切らした須賀がいた。
私は須賀の胸に抱かれて、須賀の匂いに安心する。


「はあー。電話しろって言っただろうが。」


そう言ってガシガシと私の頭をぐしゃぐしゃにする。


「ご、ごめん……」


なんで謝るんだ?と思いながらもとりあえず須賀に謝る。


須賀は眉間にシワを寄せながら、山井さんへ冷たい視線を向ける。


「………どーも。」


そんな須賀に、臆することなく山井さんも挑戦的な態度を取る。

「こんばんは。君、彼氏じゃないそうだね。」


ぐっと、私を抱きしめた腕に力が入る。



「………彼氏というか、婚約者ですからね。」


山井さんは、アハハと笑った。


「ということは、美波には気持ちがない関係なんだ。……なぁ、美波。君はそれでいいのか?」


須賀は何も答えない。
ただただ、強く私を抱きしめるだけ。
そして私も何も答えない。


須賀への気持ちがないわけじゃない。
でもそれは、まだ気づいたばかりのとても淡い想い。
口に出せるほど確かなものではない。







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