恋する気持ち。
「ちょっ!お父さんっ!」


私がお父さんに問いつめようとしたときに、須賀はタイミング悪く口を開く。


「………いや、入籍は式当日にしたいと思います。恭華さんは記念日とかこだわりそうなので。」


うん、まぁ、記念日は大事だよね。


じゃなくてっ!!


「まぁ、伊織さんったら。とてもお優しいのね。」


そう言って喜ぶお母さん。


「では、私達はそろそろ…………」



で、今に至る。


両親が去ってしまい、部屋に残るのは11年ぶりに会った須賀 伊織だけ。


私はからだごと須賀の方を向くと、問いつめる。


「ねえ。いったいどういうこと?」


須賀は、チラッと私の方を見るとまたハッと短く息を吐き、馬鹿にしたように笑う。


「すごい眉間のシワ。もうじき30だろ?そのまま永久的なシワになるぞ。」


「はぁ!?」


と言いながらも、ちょっと気にしてシワを伸ばす。
そうだよ。そうだったよ!
この男、須賀 伊織という男は、私が何か言うと必ず何か嫌みを返してくる男だった。
でも、そんな嫌みにかまってる暇はない。なんてったって、私の人生がかかってるんだから。


「とにかく!冗談だよね!?あんただって結婚する気なんてないでしょ?」


須賀は、箸を置くと頬杖をつきながらそれはそれは妖しく笑った。
その妖艶さに思わずドキっとしてしまう。


二人の間に流れる少しの間。


それが耐えられなくなるほどに須賀は、私を見つめた。



そして


「………するけど?結婚。美波 恭華。お前と。」







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