オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
「今、久しぶりに友達と集まってて…この後友達の家に泊まるので、帰るのは明日の夕方になりそうなんです。」

「そうか…。」

「政弘さん、最近ずっと忙しくて疲れてるでしょう?明日はゆっくり休んで下さい。」

「うん…。」

(誰の所に泊まるのとか…聞けないな…。)

「それじゃ…おやすみなさい。」

「あ…愛美!」

電話を切ろうとした愛美の声を思わず遮った。

「ハイ、なんですか?」

「明日の夕方、行ってもいい?」

「それじゃあ、早めに帰るようにします。明日は夕飯一緒に食べましょうね。」

断られなくて良かったと心底ホッとして、緒川支部長の口元がほんの少しゆるんだ。

「うん…夕方行くよ。」

「帰る時間、またメールします。」

「…うん。」

もう少し愛美の声を聞いていたいけれど、仕方なくおやすみと言おうとした時。

電話越しに、ガラッと勢いよく引き戸を開ける音がした。

「おーい、早く来ないと愛美の分みんなで食っちまうぞー。」

それは紛れもなく健太郎の声だった。

「ちょっと…!まだ電話中だからあっち行っててよ!邪魔しないで!!」

通話口を手で塞いだのか、愛美が健太郎をたしなめる声がくぐもった音で聞こえた。

その声がなんだかやけに楽しそうで、緒川支部長は拳をギュッと握りしめた。

「なんだそれ…。」

緒川支部長は小さく呟いて電話を切った。

スマホを鞄に放り込んで、苛立たしげに車を発進させた。

愛美は健太郎の名前は出さず“友達に会う”と言った。

ただの幼馴染みと会うのは、隠さなければいけないような後ろめたい事なのか。

(俺とは遅くなったら会えなくても、あいつには会いに行くんじゃん…。)


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