オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
愛美はカニクリームコロッケを味わいながら、高校生の頃を思い出していた。

高校時代、昼休みには愛美のクラスに集まり、健太郎、由香、武、駿介と一緒に昼御飯を食べた。

健太郎はいつも自分でお弁当を作っていて、購買のパンでお昼を済ませる事の多かった愛美におかずを分けてくれたり、おかずを多く作りすぎたからと言って、愛美のお弁当を作ってきてくれたりもした。

(確かに健太郎とは、ちょっとだけその気になっちゃった事はあるけどさ…。)


初めての彼氏は健太郎だった。

健太郎の事は好きだったと思う。

でもあれは恋ではなかったとも思う。

“付き合っちゃおうか”なんて言って、なんとなく付き合い始めた。

みんなでいる時は楽しいのに、いざ恋人として二人きりになると、どうしていいのかわからなかった。


(キス…とか…一応したけど、なんか急に健太郎の事が怖くなったんだよね…。)

さっきまで幼馴染みのみんなと無邪気に笑っていたのに、二人きりになるとそれまで幼馴染みだった健太郎が、急に知らない男になったようで怖かった。

いつも割と強引な健太郎に求められると断りきれなくて流されてしまい、心と体がバラバラになるような苦痛を覚えた。

結局、そのうちうまく笑えなくなって、やっぱりやめようと言ったのは愛美だった。

幼馴染みとしては好きだけれど、恋愛対象としては好きにはなれなかった。

(元の幼馴染みに戻ろうって二人で決めて、何もなかったふりしてたけど…ホントは高校卒業するまでずっと気まずかったな…。卒業して会わなくなってホッとしたっけ…。)







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