オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
「もしかして佐藤さん…その時、支部長の事好きだった?」

愛美が大学生の“政弘さん”をおぼろげに思い描いていると、赤木さんが声のトーンを下げて佐藤さんに尋ねた。

愛美は急にドキドキして更に耳をそばだてた。

「そう…ですね…。」

佐藤さんが小さな声で答えた。

「付き合ってたとか…?」

「……ハイ。」

オバサマたちが興奮して声をあげた。

「あっ…もう昔の事ですから…。ここだけの話にしておいて下さいね。支部長には…。」

「わかってる、何も言わないから大丈夫よ!」

「こんな偶然もあるのねぇ…。」

「支部長まだ独身よ。狙っちゃえば?」

愛美は激しく動揺して、からになったマグカップを持って立ち上がろうとした。

その瞬間足首に痛みが走り、思わずマグカップから手を離した。

落ちたマグカップはガチャンと大きな音をたてて割れてしまった。

「あ…。」

愛美は割れたマグカップを呆然と見つめて立ち尽くす。

(割れちゃった…。)

大きな音に驚いて振り返った金井さんが、慌てて愛美のそばに駆け寄ってくる。

「大丈夫?破片で怪我してない?」

「すみません、大丈夫です…。」

金井さんは掃除道具のロッカーからほうきとちり取りを持って戻って来ると、チラリと愛美の様子を窺った。

「菅谷さんにしては珍しいわね。」

「うっかりいつもみたいに立ち上がろうとして…足の痛みに驚いて落としちゃいました。」

「そう…捻挫、かなりひどそうね。やっぱりちゃんとお医者さんに診てもらわないと。ここは片付けるから、無理しないで座ってて。」

「すみません…。」

(あー…何やってんだろ、私…。)



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