オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
緒川支部長はうろたえる愛美を乱暴にベッドの上に降ろし、愛美に覆い被さって腕を押さえ付けると、噛みつくように唇を塞いだ。

突然の強引で乱暴なキスに驚き、愛美はすくみあがる。

強く掴まれた腕が痛い。

いつもは優しく包み込むように抱きしめてくれる大きな手が、愛美の自由を奪う。

不意に、かつての恋人に何度も殴られ無理やり犯された記憶が、愛美の脳裏を掠めた。

(いや…怖い…!!)

愛美の目から涙が溢れ頬を伝った。

緒川支部長は、愛美が涙を流しながら体を小刻みに震わせている事に気付き、手を離した。

「…ごめん…。」

緒川支部長は拳をギュッと握りしめる。

「愛美にとって…俺ってなんなの?」

「えっ…?」

思いがけない問い掛けに愛美は耳を疑った。

「仕事してる時は嫌いな上司で…普段は優しいだけが取り柄の男?優しくないとそばにいる価値もない?」

「なんで…そんな事言うんですか…。」

「甘えてもくれない。頼ってもくれない。あいつにならなんでも言えるのに…俺には安心してわがままも言えない?」

「そんな…!」

「俺は愛美が思ってるほど優しくもないし、大人でもない。こんな俺、愛美にとってホントに必要?」

愛美は黙り込んだまま何も答えなかった。

「…やっぱり何も言ってくれないんだ。優しくない俺なんか好きじゃないか。」

緒川支部長は愛美に背を向けて玄関に向かう。

「明日から、まともに歩けるようになるまで有休取れ。いいな。」

仕事中と同じようにそう言って、緒川支部長は部屋を出ていった。

愛美は何も答えられないまま、その背中を見送った。

一人になると、後から後からこぼれ落ちた涙が頬にいくつもの筋を作った。

「大好きなのに…なんで…?」


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