オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
翌朝。

愛美はベッドの上でぼんやりと天井を眺めていた。

まともに歩けるようになるまで有休を取れと緒川支部長に言われたけれど、本当にそれでいいのだろうか。

夕べ言われた言葉が、一晩中頭を駆け巡った。

(政弘さんがあんなふうに思ってたなんて気付かなかった…。)

多忙な“政弘さん”を気遣って遠慮していた事は確かだけれど、一緒にいられる時は甘えていたつもりだった。

健太郎の言う事なら素直に聞けるとか“政弘さん”には安心して甘えられないとか、もちろんそんな事は全くない。

幼馴染みなので気心は知れているが、昔ほんの少し付き合っていたからと言って、今の健太郎に対して特別な感情があるわけでもない。

緒川支部長にも職員のオバサマたちにも、健太郎との仲を誤解されたくないし、変な噂を立てられては仕事がしづらい。

誤解は早く解いた方がいい。

健太郎にも、誤解をされるような言動はもうやめて欲しいとハッキリ言わなければ。

(私が好きなのは政弘さんだけだって、ちゃんと言おう。)


愛美はベッドから起き上がり、シャワーを浴びて仕事に行く支度をした。

腫れ上がった右足首に湿布を貼り、しっかりと包帯を巻いた。

それから軽い朝食を取って、病院でもらった鎮痛剤を飲んだ。

この足ではゆっくりとしか歩けない。

愛美は普段の通勤の時には履かないペタンコの靴を履き、いつもより30分早く家を出て、駅に向かってゆっくりと歩き出した。



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