オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
愛美がなんとか無事に出社して支部に入ると、緒川支部長は佐藤さんの隣の席に座り、二人並んで書類をめくりながら話をしていた。

「…おはようございます。」

緒川支部長は少し驚いた様子で顔を上げて、険しい顔で愛美を見た。

「有休取れって言っただろう。」

「大丈夫ですので。」

愛美はいつも通りの態度で内勤席に着き、パソコンに向かう。

(佐藤さん、随分早いな…。)

朝はいつも緒川支部長が一番に出社して、その後に愛美、高瀬FP、峰岸主管と続く事が多い。

支部全体のほとんどを占める主婦の職員と比べると、独身の佐藤さんは朝の時間に余裕があるのかも知れない。

佐藤さんは緒川支部長の話にうなずいたり、時おり笑みを浮かべ何かを尋ねたりしている。

時々耳に入る言葉の端々から、会話の内容は仕事の事であるのは間違いない。

どうやらこの間言っていたエステサロンを佐藤さんが担当する事になったらしい。

元美容部員で美容に関しての知識が豊富な佐藤さんは、エステサロンの担当にピッタリだ。

佐藤さんが仕事に慣れるまで、しばらくは緒川支部長が同行するのだろう。

仕事だとわかっていても、緒川支部長が昔の恋人の佐藤さんと長い時間を共にする事は、愛美にとって穏やかではない。

もしかしたら自分の知らない所で、緒川支部長が佐藤さんと…と不安になる気持ちを、愛美は必死でかき消そうとした。




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