オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
愛美はパソコンで支社からの業務連絡を確認しながら、気付かれないように視線だけをそっと佐藤さんに向けた。

佐藤さんは今日も綺麗に化粧をして、スラリとしたスタイルのいい体に似合う品の良いスーツを着ている。

肌だけでなく滑らかそうな手は指先まできちんと手入れされていて、形の良い爪は淡いピンクと濃いピンクのネイルカラーで彩られている。

(ホントに綺麗な人は、隅々まで手入れを怠らないもんなんだな…。)

愛美はふと、自分の顔に手を触れた。

寝不足のせいか、なんとなくかさついて化粧の乗りが悪い。

その肌に触れた指先も少し荒れていて、短く切り揃えた爪は可愛いげの欠片もない。

(ボロボロだ…。ちゃんと手入れしようって思ってたとこなのに…。性格だけじゃなくて、全体的に可愛いげがないな、私は…。)

美人の佐藤さんと自分を比べて落ち込んでも仕方がない。

一日や二日頑張った所で急に佐藤さんのように綺麗になれるわけなどないし、そもそも佐藤さんとは持って生まれた物が違いすぎる。

(どうすれば政弘さんが望むようなかわいい女になれるんだろう?やっぱり見た目もかわいくなるようにもっと努力した方がいいかな?)

“政弘さん”が望むように上手に甘える事も、緒川支部長に素直に頼る事もできない。

佐藤さんのような美人にもなれない。

だけどせめて“政弘さん”にだけは、一番かわいいと言われる存在になりたい。

(どうすれば政弘さんが望むようなかわいい女になれるんだろう?)


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