オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
オバサマたちは彩り鮮やかな押し寿司に目を輝かせている。

愛美が押し寿司を眺めていると、健太郎が愛美の耳元に顔を寄せた。

「愛美、誕生日おめでとう。」

「覚えてたの?」

もう何年も一緒にお祝いなどしていないのに、健太郎が誕生日を覚えていてくれた事に愛美は驚いた。

「忘れるわけないだろう。昔、愛美の誕生日パーティーでさ、おばさんがいつもケーキみたいな押し寿司作ってくれたじゃん。愛美は子供の頃から甘い物が苦手だったもんな。」

「そうだね。すごく懐かしい。」


子供の頃は毎年、誕生日を幼馴染みと一緒にお祝いした。

愛美の母親はケーキが苦手な愛美のために、子供たちが喜ぶようにと、ケーキに見立てた綺麗な押し寿司を作ってくれた。

大人になるとそんな誕生日パーティーもしなくなったので、誕生日にはいつも母の作ってくれたケーキのような押し寿司があった事を、愛美は忘れかけていた。

この歳になってまた同じように、幼馴染みの健太郎が祝ってくれた事は、驚くと同時に照れ臭くもあるけれど、素直に嬉しかった。


「彼女だったらもっといろいろしてやるんだけどな。幼馴染みだからこれくらいでいいか?」

「じゅうぶんだよ。ありがとね。」

健太郎は愛美の頭をポンポンと軽く叩き、笑って座敷を後にした。

(いくつになっても、こういう所は変わらないんだな…。)

愛美はそんな事を思いながら、健太郎の作ってくれた押し寿司を口に運んだ。

それはどこか懐かしく、優しい味がした。


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