青と口笛に寄せられて
突き抜けるような青い空。
東京でも似た空を見ているはずなのに、どうしてこんなに違うのかな。
何が違うのかな。
景色が流れてゆくのを横目に、少しだけ視線を上に向けた。
雪のせいかな。
あまりにも真っ白な雪に包まれて、青が映えるんだよね。
なんて綺麗なんだろう。
ここに来なければ気づかなかっただろう。
私はここに来たことで、人生得したって思っている。
私にはこの場所が合っている。
しばらく犬たちを走らせて、Uターンして来た道を引き返す。
すると、向こうで手を振る誰かの姿が見えた。
青いダウンジャケットを見て、啓さんだと思って右手を大きく振った。
ゴーグルとネックゲイターの下は溢れんばかりの笑顔だってことは内緒だ。
「深雪ちゃーん!」
呼ぶ声を聞いて、「あれ?」と手を振るのを止める。
啓さんじゃないぞ。
彼は「深雪ちゃん」とは呼ばないからだ。
疑わしい目をして彼の元にたどり着くと、
「政さんですね!?」
と尋ねた。
その人は、ゴーグルを額に上げてにんまり笑った。
「なんだぁ、バレたかぁ」
「ダウン借りたんですか?」
「うん、まぁ無断でね」
それじゃ今頃啓さんは怒っているんじゃなかろうか。
政さんなら笑ってスルーしそうだけれど。