青と口笛に寄せられて
「札幌行く?小樽いく?旭川行く?行くなら泊まりがけの方がいいんだよねぇ〜。遠いし、行くところ多いし」
しれっと普通に「泊まり」とか言っちゃってるし、この人。
完全に襲う気満々じゃないですか!
「ドームにプロ野球見に行きたいです!日本ハム」
「野球かぁ〜、俺は専門外だわ」
「じゃあ1人で行きます」
「啓なら日ハムファンだよ」
反応に困って「へぇ〜」と適当な相槌を打つに留まる。
啓さんと2人でプロ野球観戦っていうのもピン来ないような。行くなら麗奈さんと行くだろうし。
そこへタイミングがいいのか悪いのか、ちょうど啓さんと麗奈さん2人の姿が視界に入る。
麗奈さんが手に持っている紙を啓さんに見せて、なんだか仲良さげに笑っている。
楽しそう。
同時に胸がチクリと痛む。
これはマズイな。
早いところ諦めないと。
麗奈さんのことだって大好きだし、2人はどこからどう見てもお似合いの美男美女なわけで。
「方向転換」
私はぐるっと向きを変えて、違う方向へ歩き出した。
ちょっとビックリしたように政さんが後ろをついてくる。
「え!?深雪ちゃん!?おーい、深雪ちゃーん!犬舎こっちだべ!」
「遠回りしよ!遠回り」
「なんでさ?」
大人になっても恋って難しいんです。
素直になれないんです。
好きな人と彼女が寄り添ってる姿を見るのはちょっぴり切ないんです。