青と口笛に寄せられて
犬舎の中の檻に犬たちを戻しながら、クククと政さんが肩を震わせて笑いをこらえているのを見て、私は首をかしげた。
「どうかしたんですか、政さん」
「んー?いや、啓がね」
「啓さんが?」
まじまじと政さんを見つめる。
彼は私の真剣な眼差しを感じて、豪快に吹き出した。
「あっはははは!ううん、ちょっとね。大事な子犬ちゃんを守りたいんだなーって思ってさ!」
「え、子犬がいるんですか?どこに?」
「こりゃ啓が相当頑張らないと気づかないね」
「話が見えませんけど」
「見えなくてよろしい」
「……………………」
なんて曖昧な!
子犬なんてどこにもいないじゃないの!
膨れっ面で政さんを睨んでいると、彼はひと息ついて私の両頬に含んでいる空気を押し出すように両手で顔を挟んできた。
ブーッと口から空気が漏れる。
思わず笑っていると、政さんがにっこり笑みを浮かべた。
「君さ、犬っぽいって言われたことない?」
「へ?」
「背もそんなに大きくないし、小型犬か中型犬かな〜」
「啓さんには言われましたよ、犬っぽいって」
「あらまぁ〜」
なんだかとっても楽しそうに肩をすくませた政さんは、私から手を離すと「よし!」と何かを思いついたように手を叩いた。
「深雪ちゃんとのデートは諦めるべ!その代わり春になったら啓とドームでプロ野球でも見てきなさい!ね?仕方ないから譲ってやるわ」
「は?」
「日ハム見たいんしょ?」
「…………はぁ」
1人で話して1人で納得する政さんに、私は一切ついていけないのだった。