青と口笛に寄せられて


「地獄って!?え!?えええ!?ちょ、ちょっとちょっと〜!!み、深雪いいいいいぃぃぃぃ……」


なにやら呼びかけている怜の声は聞こえたけれど、それはすぐに聞こえなくなっていった。
ソリに乗ってあっという間に遠ざかっていった政さんの目立つ赤いジャケットは、強くなってきた雪に紛れて見えなくなった。


残された私は、落ち着き払った様子の啓さんに聞いてみた。


「あの、啓さん……」

「ん?」

「怜は一体どこへ連れていかれたんですか?」

「雪流しの刑」

「いやだから、雪流しって……」

「そのまんま。雪原地帯に放置するんだわ」


…………………………え?


目が点になった私は、ついさっきまで「好きな人がいる」ことを知られてどうしようとか思っていたことも忘れて啓さんをガン見してしまった。


「そ、それって……死ぬんじゃ……」


テレビに遭難者として怜の名前が載り、ヘリコプターやらなんやらで中継されて捜索される様子が思い浮かばれる。
私だってそれになりかけて死ぬかと思ったんだ。


私が危惧していることを彼も悟ったらしい。
でも、イタズラっ子のような笑みを浮かべた。
それがまたちょっと可愛らしいと思ってしまってドキッとする私、どうにかしてくれ!


「死なない、死なない。俺たちにとってこの辺りは庭だから。ある程度放置して心細さが最大値に達した頃に迎えに行くべ。雪流しの刑って、昔よく麗奈のオヤジさんにやられたんだよなぁ、俺と政」

「それはそれは壮絶な幼少時代をお過ごしで……」


ある意味、雪国ならでは、犬ゾリ地帯ならではの「罰」だわ。
うちで言う、玄関の外に放り出されるみたいなもんなのかしら?


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