青と口笛に寄せられて


この土地で生まれ育ってきた彼らが大丈夫って言うのなら、それを信じてみることにするか。
怜だってこの場所のことをバカにしたりして、なかなか失礼なことを平気で言ったりするからバチが当たったんだ。
大自然の素晴らしさと恐ろしさを両方味わうがいい。うっひっひ。
……ってこんな酷いことを考えちゃう私ってどうなんだろう。


1人で自己嫌悪に陥っていると、不意に啓さんの手が私の頭に伸びてきた。
なんだなんだと思っていたら、頭の上に積もった雪を優しく払ってくれた。
頭ひとつ大きな彼の胸元を見ていたら、上から啓さんの声がした。


「元彼に変なことされてないか?」

「されてないですよ、むしろ突き飛ばしたりしちゃって……。私の方が暴力ふるっちゃいました」


突き飛ばされた怜がポカンと口を開けて私を見上げているあの間抜けな顔が思い出される。


「なんであんな人と付き合ってたんだろう……。私って本当に男を見る目が無いです……情けない……」

「新たに好きになった男はどうなんだ?中身はちゃんとしてるのか?」

「へ?」


聞き返してから気がついた。
そういえば私、怜に豪語してしまったんだった。好きな人がいるって。


ぎゃあーーー。
やっぱり聞かれてた。


一瞬にして自分の顔が赤くなった。
ボンッて音がしたんじゃないかと不安になるほどに。


「そ、そそ、それは……、それはですね……」


しどろもどろになり、寒からなのか緊張からなのかロレツが回らない。
そーっと視線を上げてみると啓さんの綺麗な青い瞳が私を見ているので、これは目が合ったらマズいパターンだと思って顔を背ける。


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