青と口笛に寄せられて
どうせならこのまま告白を……、いやダメだ!
彼には麗奈さんというあんな素敵な恋人がいるんだから、私が告白したところで気まずくなって終了なのは目に見えている。
言っちゃダメ、言っちゃダメ。
封印するんだ。
「私の好きな人には、彼女がいるんです……」
ポツリと答えた私の声を、啓さんが反芻する。
「彼女がいる?」
「だから、いいんです」
気持ちがバレるかバレないかのギリギリのラインだと思った。
啓さんが恋愛に対してカンがいいのであればバレてしまうかもしれない。
麗奈さんがいるから、諦める。
直接的ではないにしろ、そう言ったことには変わりない。
「ちゃんと諦めますから、安心して下さい」
彼の目を最後まで見れないまま、私はそれだけ言ってロッジの中へ戻った。
まだ頭に啓さんの手の感触が残ってるみたいに、温かい。
ロッジの中も暖房が効いてポカポカしてはいるけれど、彼の手には太刀打ちできない。
毎日顔を合わせて仕事をする人を好きになるって、けっこうキツイなぁと思った。
なにしろすでに恋人がいる、っていうのが辛い。
これが相手がフリーなら状況は全然違っていたのに。
啓さんが麗奈さんと付き合っていなければ、さっき私は彼にきっと告白していたに違いない。
まだここで働きたいし、何も言わなければ啓さんのそばで仕事を続けられる。
それなら、私は何も伝えない。
この気持ちは奥底に隠しておく。
それでいい。
ちょっとだけ切なくなりながら、扉の向こうにいる啓さんを想った。