青と口笛に寄せられて
ほんの少し離れたところで啓さんが怪訝そうに私たちのやり取りを見ているのが見える。
変に勘づかれても困る!
「協力なんていいです!諦めますから〜!!」
あわわわわ、と慌てて離れようとしたら、その手をガッチリ掴まれた。
「ダーメ。諦めない、へこたれない!」
「嫌っ、嫌だあああああ……」
「ダーメ!」
なんなの、この押しの強さ!
幼なじみなら知ってるだろうに、啓さんと麗奈さんの関係を!
それなのに諦めるなへこたれるな、って鬼かーーー!
そっとしといてほしい。
「おい、政は知ってるのか?相手の男」
啓さんまで興味を示してそんなことを言い出してきた。
止めて〜!穴があったら入りたい〜!
涙目の私をよそに政さんがドヤ顔でうなずいている。
「知ってる知ってる!少なくともさっきの元彼よりはマシよ。そうだな〜、ちょっと無愛想でちょっと人より口が悪くて……」
「やーーーめーーーてーーーーー!!」
「え?なに?深雪がうるさくて聞こえない。もう一回言って、政」
「やーーーめーーーてーーーーー!!」
「深雪ちゃん、ちょっと本当にうるさいよ」
「聞こえないって言ってるべ」
「やーーーめーーーてーーーーー!!」
何が悲しくて雪が舞う極寒の外で叫ばなきゃならないのか。
私は人差し指を突き立てて政さんに忠告した。
「政さんシャラップ!それ以上しゃべったら無視!」
「は、はいっ」
続いて啓さんに人差し指を突き立てた。
「啓さんはそれ以上追求しない!」
「…………ハイ」
2人の返事を聞いて、パンパンと手を叩いて彼らの背中を無理やり押した。
「はいっ、ということでこの話はおしまい!さっ、仕事に戻りますよ〜。ほらほら、犬たちが見てますよ〜」
ヤツらの背中を押しながら、人知れず深いため息をついてしまった。
疲れる………………、と。