青と口笛に寄せられて
ただし、冬のシーズンと大きく違うところがある。
それは、休みだ。
正直言って、冬の間は休みなんてほとんど無かった。
毎日毎日、曜日の感覚が無くなるほどに働き続けていた数ヶ月。
何もしなくても毎日大量に雪が積もるので雪かきに追われ、定休日を設けていないので犬ゾリ体験ツアーの予約は連日すごいことになっていた。
だから、休みたいと言える状況でもなかったのだ。
それが、4月になったら劇的に変わった。
週休二日制、なんならもっと休めることもあって驚いた。
ゆる〜く、まったりしている手蔵夫婦の気まぐれで、「明日から2連休ね」とか「次の土曜日から3連休ね」とか、そんな感じ。
免許は持っているものの、ほとんど運転経験の無い私は休みをもらってもどこに行くことも出来ず、結局麗奈さんや裕美さんに少し離れたショッピングモールに連れていってもらったりするくらいしか休みの過ごし方は無かった。
東京にいた頃は休みの日は1日中ウィンドーショッピングしたり、小洒落たカフェでのんびり過ごしたもんだ。
でも私はこの何も無い今の場所が、とてつもなく気に入っていた。
休みだからってどこかに出かけることもなくボーッとリビングでくつろいだり、ちょっと外に出て雪が残る林の中を歩いたり。
それだけで気持ちが良かったからだ。
ついこの間連れていってもらった本屋さんで北海道の最新の観光ガイドを3冊購入した私は、それらを並べて読みながらコーヒーを飲んで夜のひとときを過ごしていた。
リビングに残っていた従業員のみなさんが次々にお風呂に入りに行ったり、思い思いに自分の時間を過ごす。
繁忙期よりも、みんな心にゆとりが持てているような光景だった。