青と口笛に寄せられて


「まぁ、観戦の予定は色々組むつもりではいたけど……」


啓さんは断るでもなく引き受けるでもなく、なんだか微妙な返事をして私をチラリと見てくる。
気が重いって言いたそうだな。


そんか彼に構うことなく、政さんが「そんな事言わずにさ〜」と恭しく啓さんの肩を揉み始める。


「深雪ちゃんこっちに来てから全然遊びにも行けてないんだぜ?可哀相じゃんか〜。日ハムついでに行きたいところに連れてってやれって」

「政が一緒に行ってやればいいしょ」

「俺、野球に興味無いもん」


そういえば、政さんが以前私に耳打ちした言葉があった。
「啓とうまく行くように協力してあげるよ」と。
それってこれのことか!
2人で野球観戦プラス観光してこい、ってことよね。
嬉しいけど本人は気乗りしてなさそうなんですが。


その証拠に、啓さんは眉間にシワを寄せて私を胡散臭そうに眺めている。


「プロ野球に詳しくなさそうな顔してるべ、あいつ」

「し、失礼な!」


去年なんて妹と相当ヤクルト戦を観に行ったっていうのに!


「セリーグ専門でしたからパリーグは詳しくないですけど、そこらの女の子よりは知ってるつもりですよ!北海道に来たからには日ハムファンになります、私!」

「つば九郎の写真でも撮ってればいいんだわ」

「それは妹ですってば!」


必死な私と冷静な啓さんのやり取りを聞きながら、政さんがクククと面白そうに肩を揺らす。


「連れてってあげなさいよ。いっつも1人で観戦して寂しかったしょ?」

「俺は別に……」

「はい、決まり〜!」


啓さんの反論を高速で遮った政さんが、両手を上げて喜びのポーズを作る。
さりげなく私にウィンクなんかしちゃってるし。
うまくいったのか微妙なんですけども……。


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