青と口笛に寄せられて
「一粒庵か千寿か一幻。どれか選べ」
「もう一度お願いします」
「一粒庵か千寿か一幻。味噌が美味いんだわ」
スラスラお店の名前が出てくる啓さんに拍手を送りたい気持ちになりつつ、ガイドブックでそれら3つのお店を調べて「千寿かな〜」なんて言ったりして。
「本当なら小樽の初代に連れていきたいんだけどな」
ボソッとつぶやいた啓さんの聞き捨てならない言葉を拾い上げる。
それもガイドブックに載ってたお店!
「そんなにラーメン美味しいんですか?」
「チャーマヨが美味い」
「チャーマヨとは?」
「チャーシューマヨネーズがおにぎりに挟まってる」
「ゴクッ……」
サイドメニュー来た……。
ラーメンじゃなくてサイドメニュー。
これぞ道産子情報!
テンションが上がったついでに、出来るかどうかも分からない約束をとりつける。
「いつか連れてって下さい」
「うん、いいよ」
あっさり承諾してくれた啓さんの表情はちょっと微笑んでいて、それだけで嬉しくなった。
東京に住んでいると4時間も車を走らせれば県外に出てしまう。
だけど北海道は土地が広大だから、そんなことはない。
端から端まで車で移動したらどれくらいかかるんだろう。
お金をコツコツ貯めて、ガイドブックに載っているような場所は全部制覇したいなぁと密かに目論むのだった。