青と口笛に寄せられて
札幌に着いて早速訪れたテレビ塔で、私が夢中になったもの。
それは札幌の街並みを360度見渡せる大パノラマではなかった。
いや、そこに感動するつもりで行ったはずだったのに。
実際に夢中になったのは、それではなかった。
テレビ父さん、という名のゆるキャラ。
「啓さーーーん!!テレビ父さん、可愛すぎますねー!!」
テレビ父さんのグッズ売り場でどれを買おうか迷いに迷って、ストラップとぬいぐるみを購入してしまった私。
マグカップとかポストカードとか、他にも色々あって散々悩んだ結果のこと。
そんな私を、彼は呆れ顔で遠くから見ていた。
他人に思われたいらしい。
「聞いてますかー?」
「……………一応」
「冷たいっ」
「景色は?」
「………………」
いやいや、景色も見ましたよ!
碁盤の目のような綺麗な街並み、しかとこの目に焼き付けましたよ!
で、それなりに感動してたっていうのに、へし折ったのは啓さん本人じゃないの!
「ここは夜景の方が何倍も綺麗なんだけどなぁ」
とかなんとか隣でボヤくから、なんじゃそりゃ!となったわけ。
それなら早く言ってほしかった。
ガッカリする私の目に飛び込んできたのがゆるキャラのテレビ父さん。
赤ら顔にひげ面。
なんとも言えないシルエットが乙女心をくすぐるではないか。
ということで、テレビ父さんに出会えただけでも大満足だった。