青と口笛に寄せられて


1時間後。
お腹も心も満たされて、あとは侍プリンをホテルで食べるだけとなった。


幸せすぎてとろけそうな脳みそを奮い立たせて、夜の街を歩く。
お酒もたくさん飲んだけど、酔っ払ってるわけでもなく気分がいいくらい。
早く甘いプリンを食べたい。


啓さんも相当お酒は飲んでいたものの、平然とした様子でホテルまでの道を歩いている。
いつも札幌に来た時には政さんの親戚が働いているというビジネスホテルに泊まるため、彼は慣れた様子だ。


「今日は楽しかったです〜。明日も楽しみです!いい夢見れそう」

「明日こそ食べるだけの1日だべ……」


げんなりしたようにつぶやく啓さんを、不満を持って睨んでやった。


「いいじゃないですか、グルメ旅」

「太ってもいいのか?」

「こっちに来てから2キロ太りました……」


美味しいもの尽くしの北海道。
まかない料理だってハンパじゃないほどの豪華なものばかり食卓に並ぶので、毎回ありがたい気持ちになりながら満腹になるまで食べてしまう。
服の上からお腹のお肉をつまんでいると、あはは、と笑う啓さんの声が聞こえた。


「1年後にはまるまる太ってっぺな」


反論できないのが悔しい。
本当にそうなる前に、ダイエットを敢行せねば。


2人で歩いていて気がついた。
いつもと違うこと。
私と、啓さんの距離。


仕事中はいつも彼の後ろをついていくことしか出来なかったけど、今日は違う。
私と彼は並んで歩いている。
肩を並べて、お互いに歩調を合わせて。


小さなことだけど、距離が縮まったみたいな気がした。



< 158 / 257 >

この作品をシェア

pagetop