青と口笛に寄せられて
彼の反応がおかしい。
それだけは私にも分かった。
もしかして、大いなる誤解をしていたのは啓さんじゃなくて……………………。
私?
「麗奈は俺の兄貴の恋人だべさ。なんでそれが付き合ってるとかそういう考えに至ったのか、よく分かんないわ」
ものすごく近い距離で啓さんが言い放った真実。
私の知らなかった、本当のこと。
だって誰も教えてくれなかったから。
知る由もなかったのだ。
「お、お、お、お兄さん?啓さん、お兄さんいたんですか?」
「啓次郎だぞ、名前。次郎って次男だべ、普通」
「確かに……」
「麗奈は兄貴の壮一郎と、もう長いこと付き合ってる。転勤で九州に行ってたけど、来月こっちに帰ってくるんだ。めちゃくちゃ喜んでたしょ、麗奈」
そう言われてみれば、麗奈さんが笑顔で「嬉しいことがあった」と話していたことがあった。
それってもしかして、恋人が帰ってくるから喜んでたってこと?
赤くなっていた顔が青ざめる。
「だってだって啓さん…………、麗奈さんとまるで夫婦のようになんでも分かり合ってるような空気出してたじゃないですか!」
「幼なじみだからしょうがないっしょ。そんなの政も同じだべ?」
「で、でも……」
口ごもる私に、啓さんはニヤリと口角を上げて笑った。
その顔は全てを悟ったらしい。
「ふぅん。ということは、深雪は俺に彼女がいると思ってたわけだ」
無言で見つめ返す。
口はへの字でだいぶ可愛くない顔をしているだろう。
「で?好きな人に彼女がいなかった場合、どうするんだ?諦めるのか?」
何を言わせたいんだ、この男〜!
ちょっとかっこいいからってつけ上がってるんだわ、きっと。