青と口笛に寄せられて


翌朝、里沙は早起きして朝食を共にしたあと、啓さんの運転する車に乗って私と3人で紋別のバスターミナルまで向かった。


ターミナルには既に札幌行きのバスが待っていて、別れを惜しむ間もなく妹が笑顔で手を振ってきた。


「短い間だったけどお世話になりました。啓次郎さん、姉ちゃんをよろしくお願いします」

「あぁ、気をつけて」

「里沙、東京に着いたらラインしてね」


私の言葉に対して、里沙は「分かってるよ」とうざったそうに口を尖らせ、そして荷物を持ってバスに乗り込んでいった。
彼女を追うように何人か乗り込んでいく人がいたけれど、そんなに人数は多くなかった。


定刻通りにバスが出発する。
窓際に座った里沙が、微笑みながら私たちに会釈した。
私は大きく手を振り返す。


バスはすぐに見えなくなっていった。


「あっという間だったな」


ポツリとつぶやいた私に、啓さんが隣で尋ねてきた。


「深雪は…………、これで良かったのか?」

「え?どういう意味ですか?」

「…………ううん。なんでも」


啓さんは私から目をそらし「仕事もあるから早く戻っぺ」と促した。











< 207 / 257 >

この作品をシェア

pagetop