青と口笛に寄せられて
翌朝、里沙は早起きして朝食を共にしたあと、啓さんの運転する車に乗って私と3人で紋別のバスターミナルまで向かった。
ターミナルには既に札幌行きのバスが待っていて、別れを惜しむ間もなく妹が笑顔で手を振ってきた。
「短い間だったけどお世話になりました。啓次郎さん、姉ちゃんをよろしくお願いします」
「あぁ、気をつけて」
「里沙、東京に着いたらラインしてね」
私の言葉に対して、里沙は「分かってるよ」とうざったそうに口を尖らせ、そして荷物を持ってバスに乗り込んでいった。
彼女を追うように何人か乗り込んでいく人がいたけれど、そんなに人数は多くなかった。
定刻通りにバスが出発する。
窓際に座った里沙が、微笑みながら私たちに会釈した。
私は大きく手を振り返す。
バスはすぐに見えなくなっていった。
「あっという間だったな」
ポツリとつぶやいた私に、啓さんが隣で尋ねてきた。
「深雪は…………、これで良かったのか?」
「え?どういう意味ですか?」
「…………ううん。なんでも」
啓さんは私から目をそらし「仕事もあるから早く戻っぺ」と促した。