青と口笛に寄せられて


啓さんの言いたいことは、もちろん分かっている。
家族の思いも大切にしなければいけないことも、妹がわざわざ北海道に来てくれたことを踏まえても十分伝わってきていた。


やりたい仕事が見つかったんだと理解してもらえるように、家族にきちんと話すべきなのだ。
それもちゃんと分かっている。


だけど、もしも家族が了承してくれたとして。
またここに戻ってきてもいいのかと不安になる。
啓さんに突き放されたみたいで、なんだか怖かった。


だって彼は、私に「ここにいてほしい」って言ってくれなかったから。


「深雪ちゃん、昨日は啓と話せた?元気無いけど大丈夫?」


私の暗い表情を気にして政さんが心配そうに声をかけてくれたけど、「はい、大丈夫です!」と笑っておいた。
さすがにこの件にこれ以上政さんを巻き込むのは申し訳ない思いもあった。


政さんは深く追求してくることはなく、私の肩をポンと軽く叩いて微笑んだ。


「何かあったら、いつでも相談してね?」

「ありがとうございます」


うまく、笑えてる……はず。


これからお客様が来て、犬ゾリ犬のお世話体験や乗馬体験などをしてもらわなければならない。
気持ちよく過ごしてもらえるように、私も楽しそうに笑わなくちゃ。


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