青と口笛に寄せられて
次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
うっすら目を開けたら、優しい生成りの天井が映った。
視界の隅に点滴の袋が見えて、自分の状況をなんとなく理解した。
パッチリ目を開くと、私のベッドのそばのイスに座ってコックリとうたた寝するお母さんの姿があり驚く。
そして右足がひどく痛んで、「いだだだだっ」と大声を上げてしまった。
うたた寝していたお母さんが目を覚まし、ハッとしたように我に返ったあと勢いよく私の顔のそばまで近づいてきた。
「深雪!目を覚ましたのね!?あぁ〜、よかったわぁ〜……」
「あ、足が痛いぃ〜」
「とりあえずナースコール押すわね!」
娘が痛がっているというのに、お母さんは完全スルーして枕元のナースコールボタンを押し、「目覚めました〜」と伝えている。
そしてストンとイスに腰を下ろすと、一気に畳み掛けるように私に牙を剥いてきた。
「このバカ娘ッ!心配ばっかりかけて!仕事中にこんな怪我までして!連絡もなかなかよこさないし!全くもう!お母さん、仕事休んで北海道に飛んできたのよ!感謝しなさいよっ!」
「ご、ご、ごめんなさい……」
まさかまさか、お母さんが北海道までやって来るなんて。
あまりにも予想外の出来事。
だけど今の私は、この状況がいまだによく分かっていない。