青と口笛に寄せられて
「この右足の怪我はいったい……?そもそも今って何日なの?どれくらい寝てたんだろ?」
「あんたは昨日の夕方にこの病院に運ばれてきたのよ。もう今日はお昼前。怪我は、膝を骨折してるらしいわよ」
「えええっ!こ、こ、骨折……!?いたたたた……」
骨折と言われると余計に痛みが増すから人間って不思議だ。
右足はすでにギプスで固定されていて、思うように動かすことは出来ない。太ももから脛下にかけて、白いギプスが足を覆っている。
「ついでに言うと、全身打撲してるって」
「や、やだ〜、そんなに?」
脅かすように付け加えたお母さんの言葉に戸惑いながら、私は両手で体を抱くようにして抱えた。
「お母さんは朝から病院に?」
「違うわよ、さっき来たの。朝イチの飛行機で新千歳まで来て、それから電車だのバスだの乗り継いで紋別に着いて。で、病院に来たってわけ」
「そ、そっか……。ありがとう」
お礼を言いながら、昨日(私の感覚ではついさっきの気分なんだけど)のことを思い返す。
カーブでうまく体重移動が出来なくて、スピードに乗った台車から吹き飛ばされるようにして地面に叩きつけられた……はず。
記憶が曖昧だけど、それだけは覚えていた。
なんてことだ。情けない。
ただでさえ仕事が忙しいというのに、私まで抜け出すようなことになってしまって申し訳ない思いでいっぱいになる。
「お母さんが来るまで、同じ職場の人が付きっきりでいてくれたのよ。仕事があるからって入れ替わりで帰っていったけどね」
何気なく言ったお母さんの言葉が気になり、私は食いつくようにして体を起こす。もちろん体は痛いがそれどころではない。
「その人、どんな人だった!?」
「え?そうね、背が高くて〜あんたよりは年上の……」
「目は?青かった?」
「ああ!そうなのよ、変わってるわね〜日本人なのに目が青いなんて。あれって何?コンタクト?」
啓さんだ、間違いない。
私はへなへなとベッドに体を戻して、ため息をついた。
ついていてくれたんだ。あんなに仕事が忙しいっていうのに。