青と口笛に寄せられて
それから数日後のことだった。
リハビリから部屋に戻ってきたら、大興奮した様子の南田さんが手足をジタバタさせて「深雪ちゃ〜ん!!」と叫んだ。
もしも彼女がヘルニアじゃなかったら、抱きつかれていたかもしれない。
そのくらい興奮しているように見えた。
「南田さん、どうかしましたか?」
「どうしたもこうしたも〜!!ものすごい美男美女の2人がここにやって来てねぇ、深雪ちゃんはいないかって私に聞いてきたのよ〜!!」
「美男美女?」
そんな友達、いただろうか?
いやいや私にはそんなに男友達なんていなかったはず。
美男美女ってことは、恋人同士?
記憶を思い起こしていると、南田さんが大げさな身振り手振りでその人たちのことを一生懸命説明してくれた。
「うんとね、女の人の方は目がパッチリでね、それで鼻も高かったわね。唇の形も綺麗でスタイルも良くて、笑顔が可愛らしかったわ。で、男の人はスラッとしていてね、一瞬モデルさんか何かかと思っちゃったわ。もう笑いかけられただけで中年のオバサンは心を奪われちゃうわ」
「そ、そんな人私の知り合いにいないんですけど……」
とびきりの美男美女なんて、そうそうその辺にいるものでもない。
この南田さんの様子からすると相当のハイレベルな容姿ということだけは分かる。
とりあえず考えるのはやめて、よいしょ、とベッドに腰かけて冷蔵庫を開ける。
ミネラルウォーターをゴクゴク飲んでいたら、部屋のドアがノックされた。
「こんにちは〜」
と、優しい女性の声。
それと共に姿を現したのは━━━━━。
「麗奈さん!?」
あまりにも懐かしい顔で、私は大声を上げてしまった。