青と口笛に寄せられて


「あれまあーーーっ!なんてことでしょ深雪ちゃーーーんっ!!こーんなに素敵な男性を2人も引き連れて〜!さ、どうぞどうぞゆっくりしていってくださいな〜!私はちょうどリハビリの時間ですからねぇ!」


案の定というかなんというか。
啓さんと政さんを連れて部屋へ戻ったら、南田さんが大興奮して腰が痛いのも忘れて身をよじった。
ナースコールを連打し、「あらやだ興奮しちゃって押し間違えましたァ」とか言っている。


「どーも!深雪ちゃんの友人の矢吹と言いまーす!」


政さんは得意のキラースマイルを浮かべて南田さんに近づき、車椅子に乗るのを手伝ってあげていた。


「今からリハビリなんですか?そしたら俺がリハ室まで連れていきますよ〜!なんならお手伝いしますから!」

「え!いいのかしら、こんなにハンサムな子に車椅子押してもらっちゃって。ダイエットしとくんだったわ〜」

「必要ないべさ、全然太ってませんよ〜!」

「おほほほほほほほ」


陽気に笑う南田さんの車椅子を押しながら、わざとらしく去り際にウインクを飛ばして部屋から出ていった政さん。
分かりやすすぎる態度だけど、逆にありがたいような……。


私と啓さんは目を合わせて、ちょっとぎこちなく笑い合った。
とりあえず、何か話そう。


「来るなら連絡くれても良かったのに……。お仕事は大丈夫なんですか?2人もいなかったらあっちは地獄なんじゃ……」

「夏休みの繁忙期も終わって、今は宿泊客の予約がほとんどなんだわ。行ってこいって泰助さんに言ってもらえたから。俺は東京の街のこと全然分かんないし、政も深雪に会いたいっていうから2人で来たんだべ」

「そうですか……」


心の準備も出来ていないというのに、啓さんが現れてしまった。
話したいことは山のようにあるけれど、どれから話していいのか分からない。


私がまごついている間に、啓さんが先に口を開いた。


「深雪、ごめんな」


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