青と口笛に寄せられて
まさか最初から謝られるなんて思っていなかったので、アタフタして焦ってしまった。
「あ、謝られるようなことは何も…………」
「いや、したべさ。ずっと連絡もしなかった。それから、嘘をついたこと……」
「え?」
嘘ってなんのこと?
「もしも連絡したら、もっと早く良くならなきゃ、もっと頑張らなきゃ、って深雪を焦らせるような気がして。だから邪魔しちゃいけないと思って、連絡は我慢してたんだわ。…………ずっと心配してた」
「私も……連絡しなくてごめんなさい」
「深雪は謝ることない」
啓さんは私を責めるようなことはひとつも言ってこない。
少しは責めてくれたなら、気持ちも楽になるのに。
この人は本当に仕事のときしか厳しくない人だ。
「啓さん、嘘って……なんですか?」
久しぶりに見る、青い瞳。
アッシュグレーの髪の毛は、最後に見た時よりも少し伸びていた。
彼の目は私を包み込むように見つめている。
「東京に戻りたいなら戻ればいい、って言ったこと」
啓さんはポツリとつぶやき、合わせていた目を伏せた。
「あれは、俺の本心じゃない」