青と口笛に寄せられて
朝早く、ガタンという音が廊下の方から聞こえてきて目が覚めた。
まだ真っ暗な部屋を見回したあと、布団をまさぐって携帯を探す。寝ぼけ眼で携帯の画面をつけると、まだ朝の5時だった。
遅くまでお酒も飲んだし、若干の頭痛と胸焼け。
見事な二日酔い。
「げろげろ……」
はぁ、とため息をついてから体を起こした。
ひんやりとした部屋で、なんにもない部屋で。思いっきり伸びをした。
残り少ない北海道での時間を楽しまなくちゃ。
やりたいことは済ませておこう!
とりあえず、昨夜入れなかったお風呂を借りて、身支度を整えましょ。
お風呂セット一式と着替えを抱えて、捻挫した右足首をかばいつつのろのろと1階に降りる。そこで泰助さんに出くわした。
「あ、おはよう」
「おはようございます!朝早いんですね」
「朝は除雪から始まるからね。犬たちの体調も見てやらなきゃいけないし、従業員の朝食の準備もある」
「はぁ……大変だぁ」
「お風呂入るしょ?この廊下の突き当たり左にあるよ。入浴中って札を忘れずに掲げておいてね」
「はい、ありがとうございます!」
朝から泰助さんの気遣いと優しい笑顔に癒されながら、私はお風呂へ向かった。
今日やること。やりたいこと。
まずは、お風呂から上がったら外でかまくら作ろう。
で、かまくらの中に入った姿を携帯のカメラで撮影してもらおう。
犬ゾリ体験が10時から始まるからそれまでに荷物を整理しておくとして。
昨日井樋さんが言うには、怪我をしている私は犬ゾリの操縦は出来ないだろうから、またあのカゴ(バスケットって言ってた気がするけど)の中に入れてくれるってことだった。
今度は寝袋みたいなものに入ることなく、せめて両手くらいは自由にさせてもらおう。
動画で走ってる犬たちを撮れたらいいなぁ。
帰りは適当に高速バスかなんかが停まる場所に泰助さんとかに送ってもらって、それで札幌に行ければいいか。
あわよくば今日中に新千歳空港に行って、なんでもいいから空席のある飛行機に乗って東京へ帰ろう。
最悪東京に着くのは夜中でも構わない。
どうせ仕事もしてないし、時間に追われているわけでもないのだから。