青と口笛に寄せられて
救助してもらった時は寝袋みたいなものに包まれていたから、ここまで直にスピードを感じなかったけど。
このなんとも言えない不安定な感じと、お尻がグラつく感じ。
ジェットコースターに似ていた。
ハッ、ハッ、という犬の息遣いが聞こえる。
ソリの滑る音と、犬の息遣いと、時折犬たちに声をかける井樋さん。
昨日も聞いた気がする「ハー!」とか「ジー!」とか、そういう指示の言葉。
意味ってどんなだろう?
まるで広い世界に、人間2人と犬4匹しかいないみたいな空気。
やがて目の前が開けたかと思うと、一瞬目をつぶりたくなるほどの眩しい銀世界が広がっていく。
辺り全部が真っ白の雪。
どこまでも続いていく一本道。
太陽に照らされて、雪がキラキラしている。
幻想的。
その言葉がピッタリ当てはまる。
澄んだ青空と雪は、まるで一本線を引いたようにくっきりと分かれていて。
その向こう側には何があるんだろう、とさえ考えてしまった。
抜けていく道、
下り坂でスピードに乗るソリ、
ググッと雪を踏みしめる音。
なんて綺麗なんだ。
すべてが綺麗で、淀みがない。
雪景色に見とれる私に、井樋さんの声が降りてくる。
「少し先に右に曲がる大きなカーブがあるから、右に体を寄せろよ」
「右に?」
「下手すると吹っ飛ばされっからな。俺も、あんたも」
しれっと不吉なことを言うから怖くなる。
ベルトをしていても吹っ飛ばされることなんてあるのだろうか?
なにはともあれ言われた通りにするべく、カーブを待ち構える。