青と口笛に寄せられて
「滝川さん、お待たせ〜!急いで行くべ!」
と言う裕美さんの声で、我に返った私は「はい」と返事をして彼女に連れられて車に向かうことにした。
高速バスの乗り場まで、乗せてもらうことになったのだ。
2人で駐車場へ行こうとすると、それに気がついた泰助さんが「おーい」と手を振って声をかけてくれた。
私もそれに応じるように右手をブンブン大きく振る。
なるべく大きな声で
「ありがとうございましたーっ!」
って叫んだ。
笑顔になる泰助さんの横で、麗奈さんも手を振ってくれる。
井樋さんともう1人の男性は私に視線を送ってくるだけだった。
ペコッと頭を下げて、裕美さんに促されたので車に乗り込む。
「楽しかった?ここでの出来事」
雪道をものともせず、慣れた様子で運転する裕美さんが私に尋ねてきた。
即座にうなずく。
何度も、何度も。
「めちゃくちゃ楽しかったです」
「うふふ、良かったわ。また来てね」
「…………………………はい」
間が空いたのは、名残惜しいから。
ここを離れるのが嫌だから。
不思議なくらい、みんながみんな優しい人たちだった。
困っていたら手を差しのべるのが当たり前、とでも言うような、温かい場所。
帰ってきたあと井樋さんにお願いして犬舎に入らせてもらって、カイの頭を撫でたことを思い出した。
その時、想定外のことが起きた。
カイが私との分かれを惜しむように寂しそうに鳴いたのだ。
少し高い鳴き声で、「クーン」と。
そしたらツンと何かが込み上げてきて、熱いものが目に溜まった。
まさか泣きそうになるなんてね。
自分でもビックリした。