青と口笛に寄せられて
「強めで口が悪くて怖くて…………、で?続きは?」
後ろから凄みのある声がして、急いで振り向く。
案の定というかなんというか。
井樋さんご本人が立っていた。
もちろん、とっても機嫌の悪そうな顔つきで。
ヤバい!
聞かれた!
「い、いえっ。えーと、犬には優しくて、犬にはよく話しかけて、それから犬には笑いかけてて、犬には……」
「覚悟しろよ、あんた」
しどろもどろの私の言葉を遮り一刀両断した井樋さんは、クスクス笑う麗奈さんに
「麗奈、もうこいつ連れてくから」
と言って私の腕を掴んだ。
「はーい。頑張ってね、深雪ちゃん」
ニコッと笑って手を振る麗奈さんの最後の言葉で、窮地に立たされているはずの私の心がちょっと嬉しくなった。
深雪ちゃん、だってさ。
きゃー、名前呼んでくれたぁ。
廊下を引きずられるようにして歩きながら、私は怖々と井樋さんを見上げる。
ギッと睨まれて一言も発言できなかった。
「とりあえず昨夜の雪が積もってるから、まずは雪かきから始める」
「はいっ」
玄関に行くと、すでに外へ行く準備をしている2人の男性の姿があった。
2日前の食事の時にも見た覚えのある人たち。昨日履歴書を持って戻ってきた時にもこの家にいたから、私のことはすでに知っているはずだ。
「お!おはよう〜。新人さんだね〜」
「おはようございまーす」
2人の男性は私を見るなり面白そうに笑いながら挨拶をしてくれた。
私も「おはようございます!」と返す。